母の手仕事のこと
- Mihoko Blue
- 5月14日
- 読了時間: 4分
更新日:6月3日
こんにちは
Blue blue LettersのMihokoです。
先週末は、母の日でしたが、いかがお過ごしでしたでしょうか。
わたしも、ふたりの母たち(実母と姑)にそれぞれブーケをオーダーして、手書きのカードを添えて手渡してきました。

ここ数年は、センスの良いお気に入りの花屋さんにアレンジをお任せしていますが、もともとは自分で季節の花を束ねてラッピング、手書きの手紙を添えて贈っていました。喜ぶ顔見たさに、花もカードも好みのものを見繕って作るのが好きなのです。
それは、母の手仕事をずっと見てきたおかげだと思っています。
わたしの母は、手先が器用で何でも自分で作ってしまいます。子どもの頃から、家の中で見るもの、お料理やお菓子はもちろん、インテリア雑貨、そして洋服も母の手作りが当たり前でした。
特に洋裁が得意なので、子どもの頃の洋服はほとんど母が作ってくれました。既製品は、身体にピッタリあわないからおかしい、と言ってすぐに大きくなる子どもの服でさえ、採寸して型紙を起こし、生地を手配して仮縫い、フィッティング、本縫いとまるでメゾンで服を誂えるかのように、ひとつひとつ丁寧に作ってくれました。体が大きくなると、解いて縫い直したり、妹や弟に作り直しては長く着せていました。
普段着はそれほどいいものでなくても、ちょっとした「よそいき」(京都弁でおでかけ着)は、デザインや生地にも凝って、人と被らない上質なものを着せる、というのが母のポリシーだったようです。習い事の発表会の衣装も、卒業式や成人式のドレスも、そして嫁ぐ日のウェディングドレスも、母が縫い上げてくれました。
ウェディングドレスは、特に時間と手間をたっぷりかけました。
わたしも、誰に習うわけでもなく夢を膨らませながら色々な洋服の絵を描くのが好きでしたが、ウェディングドレスの絵はたくさん描いたのを覚えています。
その中から母と一緒にデザインを選び、好みの生地を探し、裏地やチュールレース、リボンなども合わせるのも楽しくて、大阪の生地問屋をくたくたになるまで渡り歩いて手に入れました。ネット注文なんてまだなかった頃です。
それから母は、型紙を起こし、裁断、仮縫い、さらに細かい調整を何度も行いました。
襟の開き具合は鎖骨が綺麗に見えるように、袖をもうちょっと膨らませて、ウエストをキュッと絞って、スカート丈は靴に合わせてあと何センチ長めに、だの、小さな細かい部分までわたしが注文をつけ、直すの繰り返し。ボタンも生地でくるんでくるみボタンにしたり、トレーンも共布で太いボウタイにしたり、刺繍やパールを縫いつけたりと、意見を言い合いながら、わたし好みに作ってもらいました。
仕上がったものは、世界にたった一つの、二度と同じものは作れない、わたしの身体にぴったり合った一点物、贅沢なことでした。こんなわがままを形にしてくれる人なんていませんね。母だからこそ、知恵や経験、技術を駆使して娘のために形にしてくれたとも言えます。
時間と手間は大変かかりましたが、結婚式当日袖を通した時の着心地の良さ、なんとも言えない誇らしさは一生忘れることはありません。

欲しいものがなければ、自分で作る
理想のものになるまで、試行錯誤する
カッティングは、身体のラインに徹底的に合わせる
生地選び、色合わせは、ときめくかどうか
手に入れた生地と糸は、端までムダにしない
完成後も、お直しするから端切れは捨てない
あなただけのものだから、他の人は似合わない
などなど
母の手仕事を見て学んだマインドはおそろしいほどストイックです。わたしには、到底マネはできません。もののない時代に育った世代ということもありますが、手に入れたものを大切に、簡単に捨てないで、ずっと綺麗に残しておく姿勢には、頭が下がります。
そんな母の手は、もうミシンで縫うことも、針に糸を通すことも、鋏で布をカットをすることさえもできなくなりました。横たわることが多くなり、手脚が痺れて痛みに耐えて過ごす日が増えてきました。それでも、母の部屋にはミシンがすぐに使えるところに置いてあります。もうちょっと元気になったら、あれを縫おう、これを縫い直そう、そう思ってる気がします。まだまだ諦めていないのだ、と感じます。
母の、指が曲がってしまって骨ばった手がたまらなく愛おしいです。触ると痛いというので、撫でてあげることもできませんが、差し出したわたしの手も、年齢を重ねてだんだん似てきました。母から譲り受けたこの手を、大切にしていきたいと思います。わたしらしく、この手で表現を続けていきます。
さあ、今日も好きな言葉を書きます。
インクと紙はどれにしましょうか。
Thank you for your love and for the many handmade items created by your beautiful hands, mom.





